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06

2023

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04

海運業のインテリジェンス化:未来はもう来ている?

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 中国の検索サイト百度の創業者、ロビン・リーは著書『インテリジェント革命:人工知能による社会的、経済的、文化的変革を受け入れる』の中でこう述べている。「インテリジェント革命は、私たちの生産と生活に良性な革命で起こすと同時に、私たちの思考における革命ももたらす」。私たちが生きている今の時代はインテリジェント時代と呼ばれている。ビッグデータ、インターネット、ブロックチェーン、AI…これらを知っているか否かに関わらず、すでに業界の変革に大きな影響を与えている。
 世界を見ると、北欧を代表とする多くの国々が海運のインテリジェス化の研究を積極的に推進しており、今後10年以内に無人自律船の運航を実現する計画となっている。 2017年に開催された国際海事機関(IMO)の海上安全委員会(MSC)の第98回会合では、早くも「自律型無人船」が新たな議題として取り上げられた。IMOのキタック・リム事務局長も、「人、船、港」の管理に対する期待と懸念を表明している。
 近年、中国でも厦門、上海洋山、青島などの港では全自動ターミナルが建設されている。同時に、多くの研究機関、大学、企業もこの分野の研究をしている。中国の造船、海運企業は科学研究機関、大学と提携して研究を行っている。 「大直」「明遠」「凱正」は、中国船級協会(CCS)が主導して世界発のスマート船舶仕様として船舶分類記号を取得した世界初のばら積み貨物船、超大型鉱石運搬船、タンカーである。近年では、海洋ソフトウェア、船舶ネットワークシステム、統合プラットフォーム、船舶機関室などのテストガイドラインを相次いで発表している。
 中国運輸省水運科学研究所知能海運研究開発センター所長の耿雄飛氏は、貨物船は無人化し、港は自動化され、監視と警備の対象は徐々に人間から機械へと変わっていくだろうと言う。現在の技術開発レベルは、海運業のインテリジェンス化を大規模かつ広範囲に進めるにはほど遠い。今後15年間はインテリジェンス化の発展にとって重要な時期となり、各国間の技術格差が形成され、固定化されるだろうと予測している。これはすでに始まっており、今後長きにわたって海運の形態と組織に大きな影響を与えると予測される。
 2018年12月、中国で「知能船舶開発行動計画(2019~2021年)」、 2019年5月、「知能海運の発展に関する指導意見」、 2019年7月25日、「デジタル運輸発展計画概要」がそれぞれ発表され、「船陸連携に基づく船舶知能航行及び制御の重点技術」プロジェクトが実施されている。中国政府は船舶の将来の発展を計画し始めたことが良くわかる。海外の専門家は、中国の海運会社の制度的優位性と規模の優位性により、海運業のインテリジェンス化はまず中国で躍進を遂げる可能性が高いと考えている。
 インテリジェンス化の時代は急速に近づいており、今後15年間は世界の海運の発展にとって重要な段階となるだろう。新しいビジネスモデルとして海運の定義は、自律船舶を主要要素として、現代的な情報、人工知能、その他のハイテク技術を深く統合することにある。 2018年4月、IMOは第99回海上安全委員会(MSC)を開催し、海上自律水上船舶(MASS)に関する関連規制を整え、MASSの合法化が正式に開始された。今後、船舶はインテリジェント化が可能になり、機関室技術、エネルギー効率管理などの面でも自律化に入ることができる。
 船舶のインテリジェントな航行には、保証の役割を果たす海運保険も必要だ。自律航行には陸上からのサポートも必要だ。今後は、航行精度、通信地域の増幅、ネットワークセキュリティなどに対する要件の基準がさらに高くなるだろう。港湾のインテリジェント化は自動化・情報化から生まれたものであり、その代表例が全自動コンテナターミナルだ。今後は、ビッグデータやAIの技術が港湾の生産管理にさらに応用されるだろう。

 そして最も注目すべきインテリジェンス化は、海運サービスと、その付随するサービスのプラットフォーム化である。主に二つの形態があり、一つは船舶サービスおよび船舶補助サービスを提供者自らが構築するプラットフォームで、もう一つはサービス提供者とサービスを受ける者以外の第三者が運営するプラットフォームである。これらプラットフォームのメリットは、海上運送サービスの取引での高コスト問題を回避し、海上運送に関するタイムリーな情報提供ができるということである。

インテリジェンス化は無人船だけではない

海運のインテリジェンス化を実現することでどのような効果を達成できるのか、この点について徐凱氏は、少なくとも6つの効果があると考えている。 効率、柔軟性、環境、安全性、コラボレーション、そして卓越性である。インテリジェンス化を実現するための手段だけを強調するのではなく、これらすべての側面で良好な結果を達成できれば、インテリジェントであると言える。

現在、国際海運業界で議論されているのは、自律船や無人船が既存の船舶に取って代わることができるという、仮説的な最終状態に焦点を当てているようだ。しかし業界が最終結果だけに重点を置きすぎると、海運業の発展に真に影響を与える多くの重要な問題を見逃してしまうことになる。この点について、業界の専門家の中には、IMOや海運業界は自動化の進歩と発展をより重視すべきだと指摘する人もいる。新興技術であるインテリジェンス化は、機会とリスクの両方をもたらす。たとえば、船上および陸上の人員は、効率的な作業を達成するためにインテリジェント システムを使用および管理するために必要な能力とスキルをどのように習得しなけらばならない。造船所や船舶機器メーカーは、船舶のデジタル自動化システムと人々との間の効率的な連携を確保しなければならない。

歴史上の産業革命やインターネット技術と同様に、船舶のインテリジェンス化は近い将来、海運業界にまったく新しい変化をもたらすだろう。しかし、企業経営者や産業政策立案者は本当に準備ができているのだろうか。業界の専門家の中には、海運発展の今後の方向性の一つは柔軟かつカスタマイズされた輸送サービスだと語る人もいる。輸送供給の観点から見ると、スマート船をベースとした次世代の海運システムは、そのようなサービスの提供を可能にする。しかし、さらに重要なのは、顧客の物流ニーズを深く理解し、その上で効率的で柔軟性があり信頼性の高い輸送ソリューションを設計することだろう。

このことから、海運のインテリジェンス化はテクノロジーの「乱高下」だけに頼るわけにはいかず、また単にインテリジェンスを重視するだけでは不十分だということが分かる。技術の変革に加えて、開発コンセプト、組織管理、運用モデル、サービスにおける抜本的な革命も必要である。業界における最初のイノベーションは、60年前のコンテナ輸送の出現だった。それ以来、海運業界は規模拡大によるコスト削減の道を歩み始めた。インテリジェンス船の出現により、海運業界は未来への無限の展望を抱くようになったことは否定できないが、同時に、その出現は業界に「千里の道も一歩から」ということを思い起こさせるものでもある。インテリジェンスな海運事業を実現するためには、まだ準備すべき「下準備」が数多くある。

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